習い事の送り迎えで父の車に乗るのが好きだった。
甘いものに目がない父が、ダッシュボードにいつもお菓子を潜ませていたからだ。
それは細かく砕いたアーモンド入りのキャラメルだったり、濃厚なバターの香りのビスケットだったり、動物の形のカラフルなグミだったりと様々だった。
その中で秋が深まり気温が下がってくるとチョコレートの出番が増えてくる。
父かどこかで買ってくる外国製のチョコレートは特別なものだった。

特に好きだった青い包み紙にくるまれた板チョコはカカオがたっぷり入っていて日本のチョコレートに比べるとずっしりとした厚みがあった。歯を当てて噛むと初めは苦みが勝るのだけれど、舌で溶けた瞬間にとろんとまろやかな甘さが広がる。お洒落なパッケージと複雑な味は大人になったような気分にさせてくれて、たちまちご機嫌になる。

板チョコは銀紙のまま折って食べるといいよと教えてくれたのも父だ。
丁寧に包み紙をはがし両手でしっかりとチョコレートをつかみ、銀紙の上からパキンと割る。板チョコの直線に沿って綺麗に割れた欠片をさらに小さく割り、ひとつを自分、ひとつを運転中の父の口に運ぶ。とろける味に思わずお互いの顔をにっこりと見合わせる。
母には内緒のこの車中の時間がとても好きだった。

大人になってもチョコレートは好きだし自分で買ったりもするけれど、何よりあの頃の父との時間が大切に心に残っている。その時はわからなかったけれど、私の喜ぶ顔が見たくて忙しい中わざわざお店に買いにいってくれたこと、母に見つからないようにこっそりダッシュボードに用意してくれていたのだと思うと、何とも温かい気持ちになる。
そして板チョコは銀紙の上からパキンと割る、という家訓は私の娘にしっかりと受け継がれている。

10月はChocolat（ショコラ）の新作が店頭に並びます。
職人の熟練した技によって生み出されるモダンなデザインは繊細で遊び心を感じさせます。その愛らしさと美しさをぜひお手に取ってお愉しみください。
皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

– Chocolat –
Ring : Rectangle Box Chocolate Ring ¥57,000- ・ Rectangle Box Chocolate Necklace ¥57,000- ・ Square Box Chocolate Ring ¥79,000- ・ Square Box Chocolate Hook ¥70,000-