世の中には物が溢れていて、代わりがきかない物って探してみるとほとんどありません。しかしそういった代えがたい物こそ、私たちが大切にしていきたいと思える物です。本日ご紹介する「 Maria Rudman 」( マリア・ルドマン )のブレスレットもそのひとつです。
マリア・ルドマンはスウェーデン北部ラップランドに居住する’サーミ族’をルーツとした女性デザイナー。若かりし頃にはパリでファッションモデルをしたり、TV番組の司会者をしたりとユニークな経歴の持ち主です。彼女のアクセサリーは、トナカイの革をピューター(錫をメインにした合金)の糸で刺繍するサーミの伝統的な手工芸品をアレンジしたもので、現代的な装いにもスタイリングでき、またモダンでありながら唯一無二の存在感があります。
マリアのコレクションには彼女の感性を落とし込んだクラシックラインと、「伝統そのもの」とも言える古来の紋様を施したオーセンティックラインがあります。中でもタンカラーとピューターのコントラストが静かで力強い輝きを放つオーセンティックラインは私たちにとって特別なもので、いつもマリアに会うときはこのオーセンティックラインをメインにオーダーしています。しかしオーセンティックラインはその繊細で複雑な工程から、元より限られた職人しかつくることができず、また近年は職人の高齢化と後継者不足により、希少性の高いものとなっています。今回少量ながら届いたオーセンティックラインのブレスレットはなんと2年前にオーダーしたもの。そう思えば一本一本がとても貴重ですが、後継問題がこのまま解決しなければ、サーミの工芸品はこの世からなくなってしまうかもしれません。そうならないためにも、この素晴らしい手仕事を少しでも多くの方に知ってもらうことが私たちにできることだと思っています。
マリア・ルドマンのブレスレットは身につけていると少しずつ革の色が濃くなり、またピューターの輝きが増していきます。「お風呂と寝るとき以外はずっと腕に巻いている」と話してくれた女性のブレスレットは、息を呑むほど格好良く、彼女の人柄そのものを表しているように思えました。皆さまにとってマリア・ルドマンのブレスレットがただのファッションアイテムではなく体の一部と思えるような存在になれば、私たちも嬉しく、またきっとマリアやサーミの方々も嬉しく思うことでしょう。
haus / d’antan /Töölö が選ぶ、時とともに愛着が増していく洋服や服飾小物の中から気になるアイテムをクローズアップ。楽しいお買い物をより大切なものにしたい皆様にお届けします。