「Little Ladies & Little Men」は、ジェーン・ミュアーの代表的な作品のひとつで、特定の個人を表現したものではなくステレオタイプの人物や典型的なキャラクターを擬人化したものだと聞きました。まずは、それが欲しいというより作家本人に会ってみたいと翌年の渡英のタイミングに連絡をしてみました。
ジェーンのスタジオは南ロンドンに位置する駅の高架下にあり、軒を連ねるのは自動車の修理工場やカフェと雑多な雰囲気の場所で、その一角に植栽と並んでレンガの壁に飾られた作品がオーラを放っている、明らかに佇まいの異なるスタジオがありました。
青いドアを開けたその中は高架下らしいアール状にレンガを積み上げられた真っ白な空間でした。ひとりで作品作りするにはちょうど良い広さのスタジオには、大きなキルンと作業台、棚やテーブルには出来上がった作品や作りかけの粘土の塊がところ狭しと置かれていました。
ジェーンの作品はすべて手作業で造形され、釉薬はストーンウェアを使って絵付けされています。そのバリエーションは親しみやすい小さな作品から大規模な庭に置くための彫刻まであります。
まずは、フィギュアをアトリエ・ダンタンで取り扱わせていただくことになりました。その後ショップのキャラクターとして頻繁にビジュアルとして登場します。それから2016年の神戸店リニューアル時には、ジュエリーをディスプレイするための丸や四角のブロックをたくさん制作してもらいました。ジェーンの表現する繊細な色彩と魅惑的なテクスチャーは私たちのコレクションにとても通ずるものがあります。
その頃から日本でジェーンの個展をしたいねとぼんやりと話し始めました。そして最後に訪れた2020年3月以降この状況下のために渡航ができなくなり、メールのやり取りで少しずつ話を進めていきました。「屋根のない商店街」のテーマでもあるように神戸を訪れる方々に楽しんで欲しいと、新しくできたギャラリースペース「STOCK GALLERY」で個展をさせて欲しいと相談してみました。
テーマは「Bird’s-eye View」。空を羽ばたく鳥たちが見下ろす神戸の街並みをジェーンの空想する数百点の家や建物の作品で表現することに決まりました。
制作途中にジェーンは楽しい、楽しいとしきりに気持ちの高ぶりを感じられるようなメッセージをくれ、それがとても嬉しくて作品が届くのが本当に楽しみでした。
そうして英国より数週間前に届いた作品は想像以上に素晴らしく一点たりとも同じものがなく、小さいながらもジェーンのテイストがぎゅっと詰まった一点一点が紛れもないアートピースでした。数百点もある梱包を丁寧に開けていくとなんとポートタワー(神戸港のシンボルですね)やモザイクの観覧車、海や山までも入っていました。今回の個展に向けるジェーンのエネルギーとともにユーモアと優しさを感じました。
いよいよ展示まで2週間を切りました。
これらを並べるのが楽しみで仕方ありません。皆様もきっと童心に戻って鳥のように空を羽ばたいているような気持ちになることでしょう。どうぞこのイギリス人セラミック・アーティスト、ジェーン・ミュアーの貴重な展示をお楽しみにしてください。
Jane Muir Exhibition Jane Muir セラミックアーティスト |
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